市役所職員の仕事は多岐にわたり、所属部署の担当業務に加えて、災害時、イベント時、選挙時にも働いています!
その中でも選挙事務は市役所職員の重要な業務の一つであり、民主主義を支える大切な役割を果たしています。
今回は、元市役所職員としての経験をもとに、選挙事務の具体的な流れや役割について詳しく解説します。
5年市役所で働いて何度も選挙事務を経験しました!
私が勤務した自治体での事例を紹介します。選挙事務の内容は自治体によって異なることがあります。
選挙事務の種類
選挙事務といっても当日の選挙時間中の業務だけでなく、前日まで行う期日前投票、会場設営、投票後の開票作業があります。全て担当するわけではなく、私の自治体では分担して担当していました!
期日前投票 | 会場設営 | 投票事務 | 開票事務 | |
---|---|---|---|---|
実施時間 | 公示日又は告示日の翌日から投票日の前日 | 選挙前日 | 選挙当日 7:00〜20:00 | 選挙当日 20:00 |
内容 | 投票事務と同様 | 担当会場の設営 | 受付、投票用紙配布など | 投票用紙の開票、集計 |
選挙事務は断ることができる?
選挙は市民の重要な権利を守るための社会的行事であり、その運営には多くの公務員が関わっています。
特に市役所では、選挙事務を担う専任部署だけでなく、他部署の職員も選挙業務に動員されることが一般的です。
しかし、「選挙事務を断ることはできるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
結論からすると、原則断ることができないです。しかし家庭の事情などやむを得ない場合は相談すると免除してもらうこともあります!
地方公務員法に基づく職務上の義務
日本の地方公務員法第32条には、公務員が「法令及び上司の職務上の命令に従わなければならない」という規定があります。選挙事務もこの「職務上の命令」に含まれるため、基本的には断ることができません。
第三十二条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
市役所職員は、市民サービスや社会的な重要行事の円滑な遂行に対する責任が求められています。選挙もその一環であり、上司の指示に従って業務に参加することが公務員の義務とされています。
地方自治法・公職選挙法で決められた選挙管理の役割
選挙管理委員会は、地方自治法や公職選挙法に基づいて、市町村レベルで公平な選挙が行われるように活動しています。選挙の実施には市役所全体での協力が欠かせません。
選挙の準備から投票日当日、そして開票作業に至るまで、やるべきことはたくさんあります。
そのため、選挙担当の部署だけでは人手が足りないことがほとんど。他部署の職員にも協力をお願いする体制が一般的になっています。
選挙管理委員会から市役所全体への協力要請が行われます。これには法的な根拠もあり、全庁的な協力体制を築くことが求められているのです。選挙運営を支える役割は、市役所職員にとっても重要な公務とされています。
地方自治法・公職選挙法による選挙管理の役割
選挙管理委員会は地方自治法および公職選挙法に基づき、市町村レベルで公正な選挙の実施を担っています。
これらの法律には、市役所の組織全体で選挙運営に協力する体制を築くことが求められています。
選挙は多くの手続きや設営、当日の投票管理、開票事務が伴うため、選挙専任の職員だけでは人員が足りません。他部署の職員にも協力を要請するのが一般的です。
健康や家庭事情による配慮
地方公務員法に基づき、基本的には選挙事務を断ることはできませんが、やむを得ない事情がある場合、上司に相談することで配慮がなされることもあります。
例えば、健康上の問題や家庭の事情により、長時間の勤務が難しい場合、選挙当日は育児で手が離せないなど事前に上司に報告しておくと、勤務時間の調整や業務内容の変更が検討されることがあります。
早めに相談して欠員補充の手配をしてもらいましょう!
当日までの仕事
期日前投票
期日前投票とは、選挙当日に投票に行けない人が、あらかじめ投票できる仕組みです。
投票日は限られているため、仕事や旅行などで当日に都合がつかない人でも投票できるようにするための制度です。
期日前投票は、公示日の翌日から選挙日の前日まで実施されます。この期日前にあたっている人は大抵どこか1日を担当することが多いです。
期日前投票を経験すると当日の流れを掴むことができます!
投票用紙・備品などの確認
選挙当日に向けて、担当する投票会場で必要な投票用紙の枚数が適切に準備されているか、当日必要な物品(筆記用具・会場設営で必要な物品など)が揃っているかを確認します。
前日の会場設営
選挙の前日には、会場の設営作業が行われます。ポスターなどの掲示物を適切に隠し、投票者がスムーズに動ける動線を確保するなど、準備が整った状態で当日を迎えるための重要なステップです。
私が実施していたときは3〜4時間ほどかけて設営していました!
当日の仕事
投票事務(7〜20時)
当日は、早朝の6時頃に会場に集まります。主な業務は多岐にわたりますが、投票所の運営を円滑に進めるためには、各職員が責任を持って役割を果たすことが求められます。
担当の投票場所が混み合うかどうか、空調が効きやすいかどうかで辛さが変わってきます!
真夏や真冬に実施する選挙で、投票所が体育館だと辛い…
仕事内容自体は単調なので慣れると簡単ですが、ミスが許されないため常に緊張感に包まれています。
- 場内の案内
- 投票の代筆
- 投票者の受付・投票用紙の交付
- その他雑務(途中経過の報告などリスト
- 統括・選挙管理委員会との連絡調整
- 会場の原状復帰・投票箱を開票所へ移動
開票事務(20時〜)
開票事務では、投票所から集められた投票箱と書類をチェックし、候補者や政党ごとに票を仕分けして集計を行います。具体的には、次のような流れです。
投票用紙の種類数によって拘束時間が増減します!
開票事務では、投票所から集められた投票箱と書類をチェックし、候補者や政党ごとに票を仕分けして集計を行います。具体的には、次のような流れです。
- 投票箱の受け取りと開錠:各投票所から届いた投票箱を受け取り、内容確認後に開錠します。票は候補者ごとに分け、書かれていない白票や、判断が必要な疑問票を抜き出します。
- 票の確認と分類:分類した投票用紙をさらに点検し、正確に仕分けが行われているか再確認します。
- 票の計算と集計:分類した票を、機械や複数人で数え、正確な数を集計します。疑問票についても審査を行い、有効・無効を判断します。
- 結果の確認と保管:開票立会人が確認した上で、得票数を記録した開票録を作成し、全ての投票用紙は有効・無効に分けて封印され、保管されます。
つらいこと
失敗が許されない
選挙事務では、失敗が許されません。万が一ミスが発生すると、それが全国的なニュースとして取り上げられることもあり、職員としての精神的な負担は非常に大きいです。
業務内容は単純で誰でもできますが、誤った投票用紙を渡してしまう、投票場所ではない会場で受付してしまう、などがあってはいけません。
早く無事に終わりますように…といつも願いながら仕事していました。
長時間の拘束
自治体によっては投票事務から開票事務まで担当することもあります!
その場合はおよそ15時間ほど拘束されることに…
終わったあとも翌日が平日なので、有休を取得しない限りは肉体的にとてもハードです。
選挙のあった週の中で有休を取得する職員がとても多かったです!
過酷な環境
特に真夏や冬の体育館での業務は厳しいものがあります。空調が効きにくい環境では、身体的な負担が大きいです。
選挙事務から得られること
他部署の職員との人脈形成
拘束時間が長いと選挙事務を通じて、他部署の職員とのつながりが生まれます。
これにより、将来的な業務の協力関係や情報交換がスムーズになることも!
実際、私は選挙を通じて仲良くなった方に普段の仕事を頼みやすくなりました。
社会的な貢献
市民の選挙参加を支えることで、社会に対する貢献を実感できるのも大きな魅力です。
自分の仕事が市民の権利を守る手助けになるという意義を感じることができます。
民主主義社会を支えている実感がわきます!
手当が得られる
選挙に関わることで、少しの手当を得ることができるのも嬉しいポイントです。
手当額は自治体によって異なります。
若手職員からするとお小遣い稼ぎにちょうどいい!と喜ぶ人もいます。
まとめ
- 選挙事務には期日前投票、投票事務、開票事務がある
- 割り振られると原則拒否することはできない
- 拘束時間が長く、ミスが絶対許されない厳しい環境
- 他部署の職員と交流することができる
- 担当すると手当がもらえる
市役所職員になると必ず経験することになる「選挙事務」について、解説しました。
休日が1日なくなり、ミスが絶対許されない緊張感の中、長時間働くことは大変ですが、他部署職員との交流や自己成長する機会にもなっています。
もし担当することになった場合は前向きに取り組んでいただけますように!